color ~蒼の色~
次の日私は、思っていたよりも早くに目が覚めた。
てっきり昼近くまで眠るものだと思っていたけれど、意外にもすっきりと目が覚めた。

(昼までに、いろいろ片付けようか…)

おそらく私の部屋になるであろう、総二郎と過ごしたこの部屋を、なるだけきれいにしておこうと思い、私は掃除を始めた。

しばらくして、下から声が聞こえた。

「すいませーん!」

(あの声…)

急いで降りれば、店内をキョロキョロしている、平井君がいた。

「あ!吉野!てめー、いつ帰ってきたんだよ!」

こっちは捜すの必死だったんだぞ!って平井君は言った。

「平井君、捜してくれてたの?」

「おうよ!お前のせいで、花火見れなかったじゃねーか!」

「え?」

平井君は私に、
“お前がりんご飴なんて言うから、花火はパァだ!”
と、いきさつを教えてくれた。

「総二郎、そんなこと言ったの?」

「おー。峰さんの怒りっぷりったらないぞ!他に言いようないのかよ、あいつ…」

「そっか…」

断ったんだ、総二郎。
花火見ないで、りんご飴買って帰ってくれたんだ。

でも、嬉しい反面……

「何?そのヒト科のメスって…」

「俺に聞くなよ!知るか!でもまぁ、よかったよ、お前見つかって」

「ありがと」

「ほれ、忘れモン」

そう言ってカウンターに置かれたのは、欠けたりんご飴だった。

「あいつ、これ落としたから拾っておいた」

割れてんのは俺のせいじゃねーぞ!と言い、平井君は帰っていった。


割れたりんご飴。
見つめながら私は、自分も“ヒト科のメス”に見えるのかも知れない…。
いや、あながち間違いではないんだけども…と、複雑な気持ちに、自問自答を繰り返した。
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