color ~蒼の色~
「D校ね~」

総二郎は立ち上がり、ぐっと伸びをした。
(あ、また身長伸びた…)
ちょっとした変化だけど、私は以前にも増して、小さな変化に気づくようになったと思う。

「よし、じゃ、やりますか、目指せD校」

突然そんなことを言うもんだから、私と平井君は目を合わせた。

「やりますかって何が?」

「まさか!勉強教えてくれんのか!?さっすがA高レベル!」

聞いてる私は驚いてしまった。
そんな頭良かったんだ、総二郎。

さらにガックリきた私。
どうあっても別々になってしまうのは、必然なのか……。
そんなにレベルが違えば、さすがに私もA校!とは言えない。

「あーのさー…」

総二郎は私の前にしゃがみ、眼鏡をぐいっとあげて言った。

「俺もD校受けるから、蒼も勉強頑張れ。ちゃんと教えてやるから」

驚いて言葉にならなかったけど、私は震える声で聞いた。

「でも、A校は?」

「んー…。高校なんか、どこも一緒じゃねー?」

一緒じゃないと思う…って言いたかったけど、それどころじゃなくて。

「じゃ、今日からね」

「おっけ。蒼んちな~」

また総二郎といられるかもしれない。
一緒の高校行けるかもしれない!

高鳴る気持ちは、私のやる気に拍車をかけたのはもちろん。
私の顔を見て、総二郎は、

「俺は今日から、鬼教師~」

と、またもや眼鏡をぐいぐいっとあげて笑った。



「お前ら、絶対俺のこと忘れてるだろ……」


聞こえた平井君の声に、私は浮かれた自分に気づいて、今更ながら、穴があったら入りたい気分になった。
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