color ~蒼の色~
「おはよう」

次の日、西尾さんに声をかければ、また驚いたように言葉に詰まり、
「お…はよ…」
と、小さく返事をした。

「これ、後で見つけて。ごめんね、黙って持って帰って」

自分なりに、つとめて明るく話し、赤ペンを差し出した。

私の手のものをしばらくじっと見つめているかと思うと、彼女は目に涙を溜めて、
「ありがとう、ごめんね…」
と言った。

(あぁ、私もこんな風だったかも…)

二言目には、ごめんって言ってたあの頃。
今だから思うのは、あれは私の精一杯のSOS。

「ねぇ、今日の放課後、時間ある?」

「…え?」

「一緒に勉強しない?今度の小テストの」

「…いいの?」

「うん、一緒にやろう」

「うん」

西尾さんの返事はか細かったけれど、顔には笑みが浮かんでいた。

私に何ができるだろうとか、考えない。

私には、経験がある。

私は彼女と“友達”になりたい。
心からそう思った。
< 71 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop