color ~蒼の色~
「何だあれ?」

まどかの去ったあとも、呆然として動けなかった私に、総二郎は言った。

なんでだろう、昨日まであんなに楽しかったのに。
いっぱい笑ってたのに。

何か嫌われることをしたんじゃないだろうか。
初めてできた女友達に浮かれた私が何かしてしまった、そう考えたけれど、そんな考えは下駄箱を開けたときに、きれいさっぱり消えてなくなった。

開けた私の靴箱に、小さい紙切れ。
ひろげてみると、飛び込んできた文字。


“西尾と仲良くするな”


あぁ、そういうことか。

ぐしゃりと握り潰し、ポケットに突っ込んだ。
きっとまどかも、何かあったんだ。

あの“ごめんね”は、彼女のSOS。

途端、ふつふつと沸く誰かに対する怒り。
そういえば、仲良くなってからというもの、それらしきことが起きていなかったため、誰がこんなことをするのか、私にはわからなかった。
もしかすると、それまでにも、まどかには何かあったかもしれないけれど、私に気づかれないように、まどかは黙っていたのかもしれない。

かつての私のように。


「おい」

「あ、どうしたの?」

いつの間にか考え込んでしまって、その場で立ち尽くしていた私に、不審に思った総二郎が声をかけてきた。

「行かねーのか?」

「あ、うん、いくよ」

ポケットでもう一度紙を握り締めた。

「それ」

「うん?」

「何か書かれてたのか?」

なんだ、見られてたのか。
私は上履きのかかとを直しながら言った。

「ただのゴミだった」

「ふーん」

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