color ~蒼の色~
昼休み、私はお弁当を持っていたけど、まどかは購買に行くというので、ついて行くことにした。

「何食べようかなー」

「おかず、半分こする?」

「いいの?」

楽しいな、友達とこんな風に話せるなんて。
そう思っていたら、まどかは急に立ち止まった。

「どうしたの?」

顔は青ざめ、ぎゅっと私の袖を握ったまどか。
前を見れば、こっちに向かって歩いてくる、3人のクラスメイト。
私は思わず、まどかの前に出た。

「そこ、どいてくんない?吉野さん」

「なんで?」

「西尾に用事あんのよね」

「そうなの、私はまどかとこれからお昼行くの。悪いけど、こっちが先約」

そう言って、まどかの手を掴み、通り抜けようとした。

「待ちなよ!西尾、あたしらに逆らう気?」

明らかにまどかは動揺して、固まってしまった。
今までのことが脳裏に過ぎったのだろう、小刻みに震えているのがわかる。

――――――あ、ダメだ。
やっぱり私の沸点低い。

「あのさ、あんた達こそ何?まどか、何かしたの?」

沸点の低さは、声にはっきりと出ていたと思う。
私が言った言葉が勘に障ったのか、1人が言った。

「何?あんたもうざいね。西尾庇って、正義の味方のつもり?だっさい女」

「そう?寄ってたかって言う方がどうなの?」

「むっかつく女―――…っ!!」

いやに冷静な私の声がさらに機嫌を損ねたのか、顔を歪ませて怒るクラスメイトの女の子。

「もういいよ、蒼ちゃんっ!ごめんね、ごめんね、巻き込んで!」

違うのに、まどかは悪くないのに。
ほんと、似てるな、あの頃と。
だったら私が今言えることなんて、ひとつじゃないか。

「謝らなくていいの。まどかは何もしてないでしょ」

あの時私に、総二郎が言ってくれた言葉だ。
私はまどかを掴む手に、ギュッと力をこめた。

「走るよ、まどか!」

振り返らず、強く手を引いて。

私は背後の声も聞かず、まどかを連れて走った。
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