color ~蒼の色~
放課後、ホームルームが終わり、ピリピリとした視線を受けつつも、まどかの手を握り、足早に教室を出れば、廊下で平井君が待っていた。

「事情はだいたい総二郎から聞いたけど、俺はアイツの使いっぱしりじゃねーんだぞ?」

不機嫌そうではあったけど、断らずに来てくれるところが、平井君の人の良さだとしみじみ思う。

「ありがと、平井君」

「とりあえず、しばらくは一緒に帰るってことで。あいつ、もう1時間授業あるし、終わるまで待ってようぜ」

平井君はまどかに自分の話などしながら、妙な緊張をほぐそうとしてくれた。

それからは4人で過ごすことが増え、教室ではガッチリ私がガードしてるもんだから、そうそう手は出せないのか、しばらくは穏やかな日が続いていた。

些細な嫌がらせはなくならなかったけど、まどかも笑うようになり、失くし物が出れば、まるで宝探しのように、4人で探し回った。

「いい加減、諦めればいいのに、懲りない人だよね」

「いいの、それでも前よりはずっと落ち着いたよ」

確かにそうだった。
前ほどの嫌がらせ行為はなくなったし、そういったことが感じれなくなるほど、割とクラスにも馴染めていた。

「多分、お前らが堂々としてるからだと思うぜ」

平井君はそう言って、喜んでくれていた。

「人って、変われるんだね」

そう言ったまどかは、本当に強くなったと思う。
泣かなくなったし、よく笑うようになった。

はじめは遠巻きに見ていたクラスメイトの子たちも、そんな私達を見て、話しかけてくれる子まで出来た。

―――――――ただ、ひとりを除いては。


ある日の放課後、総二郎を待っているとき、平井君が言った。

「吉野、お前、気をつけたほうがいいぞ」

「何が?」

「お前のクラスにいるだろ、富田って女」


富田さん。
確か私に、むかつくって言った子か―…。

「あいつ、2年の先輩に、お前のこと何か言ってるって聞いた」

「何それ?」

「そこまで知らねーよ。ただ、相手は男の先輩だから、総二郎にも言っとけよ」


私に、絶対1人になるな、と念押しした。
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