color ~蒼の色~
そこにいたのは、本当に私の知ってる総二郎なんだろうか―…。
まるで表情のない、ただその目に、動物的な冷酷ささえ感じた。
一切の隙も無駄もなく、ただ非道なまでの冷たさで、空気を切るように素早く出された拳は、的を外すなどありえないというように、蹴りで飛ばされ、転がっていた男に振り下ろされていた。
男の悲鳴と、鈍い音。
総二郎の名を叫んだ平井君でさえ、その光景に、ただなす術がなかった。
(――――…だめ。だめっ!)
「やめてっ!総二郎!」
無我夢中で叫んでいた。
だけど、私の声すら届かないのか、総二郎は顔色ひとつ変えず、男の胸倉を掴んでいた。
「きゃぁぁっっ!!!」
富田さんの悲鳴に、金縛りにあっていたような平井君は、我に返ったように総二郎の腕を慌てて掴んでいた。
「やめとけっ!総二郎!!…っうわっ!!」
その手を振りほどき、総二郎は富田さんを見ていた。
(何を…、するつもりなの…?総二郎…)
私に見向きもせず、ただ真っ直ぐ富田さんに向かって歩いて行った。
「こ……来ないでぇっ!!いやぁっっ!!」
富田さんから携帯を取り上げ、壁に叩き付けた総二郎は、今度はゆっくりと富田さんの胸倉を掴んでいた。
もう悲鳴も出ず、ただ為すがままの富田さんは、糸の切れた人形の様だった。
「総二郎!やめろって!」
(お願い……お願い……)
夢中だった。
どうしていいかなんてわからない。
ただ、その背中に抱きつくしか出来なかった。
「…っそー…じろー…。もうヤダよっ!帰ろうよ…っ」
ぎゅっと、しがみつくように抱きしめた。
そのまま動けなかったけれど、しがみつく手に、総二郎の手が触れた。
その手は確かに、震えていた。
「悪い…、遅れたか?蒼…」
まるで表情のない、ただその目に、動物的な冷酷ささえ感じた。
一切の隙も無駄もなく、ただ非道なまでの冷たさで、空気を切るように素早く出された拳は、的を外すなどありえないというように、蹴りで飛ばされ、転がっていた男に振り下ろされていた。
男の悲鳴と、鈍い音。
総二郎の名を叫んだ平井君でさえ、その光景に、ただなす術がなかった。
(――――…だめ。だめっ!)
「やめてっ!総二郎!」
無我夢中で叫んでいた。
だけど、私の声すら届かないのか、総二郎は顔色ひとつ変えず、男の胸倉を掴んでいた。
「きゃぁぁっっ!!!」
富田さんの悲鳴に、金縛りにあっていたような平井君は、我に返ったように総二郎の腕を慌てて掴んでいた。
「やめとけっ!総二郎!!…っうわっ!!」
その手を振りほどき、総二郎は富田さんを見ていた。
(何を…、するつもりなの…?総二郎…)
私に見向きもせず、ただ真っ直ぐ富田さんに向かって歩いて行った。
「こ……来ないでぇっ!!いやぁっっ!!」
富田さんから携帯を取り上げ、壁に叩き付けた総二郎は、今度はゆっくりと富田さんの胸倉を掴んでいた。
もう悲鳴も出ず、ただ為すがままの富田さんは、糸の切れた人形の様だった。
「総二郎!やめろって!」
(お願い……お願い……)
夢中だった。
どうしていいかなんてわからない。
ただ、その背中に抱きつくしか出来なかった。
「…っそー…じろー…。もうヤダよっ!帰ろうよ…っ」
ぎゅっと、しがみつくように抱きしめた。
そのまま動けなかったけれど、しがみつく手に、総二郎の手が触れた。
その手は確かに、震えていた。
「悪い…、遅れたか?蒼…」