ヤンキー君と異世界に行く。【完】
1・トリップ!
────自殺。
そんなことするやつ、絶対バカだと思ってた。
いじめられたなら、学校へ行かなきゃいい。転校すればいい。
学校なんか、世界中に山ほどある。
失恋したなら、違う人を探せばいい。
異性なら、世界中に星の数ほどいる。
希望を失ったなら、新たな希望を探せばいいじゃないか。
生きていれば、いつか見つかるはずだ。
……仁菜(ニイナ)はそんな正論を平気で吐いていた、今までの自分を恥じる。
どーでもいいことで死にたくなることって、けっこうあるものなんだ、と。
この春に新しくなったばかりの制服。
白いシャツに、チェックのスカート。
その上に大きめのカーディガン。
紺色のソックス。
ごく普通の女子高生の格好の仁菜は、ぼんやりと目の前の水面に自分の顔を映す。
……さえない。
今朝、肩までの髪を、くるりとゆるく巻いてみたけど、気分が浮上することはなかった。
去年までは、春になったら花のJK。
楽しいことが、きっとたくさんある。
そう思っていたのに。
水面に映る、ゆがんだ自分の顔。
それは、泣き顔に見えた。
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