ヤンキー君と異世界に行く。【完】
2・異世界にて
暗かった景色に一筋の明かりが差し込んだ。
それは自分がまぶたを開けたからだと、仁菜は理解する。
数度まばたきをして見えたのは、ベージュ色の、無機質な壁紙。
「……ここ、どこ……?」
首だけをやっと動かすと、素肌にさらさらとしたシーツの感触が伝わる。
ついでに、額の皮膚がつっぱっているのに気づいた。
「ああ、ムリに動かないで。
ちょっと待ってください」
「……!?」
突然頭の後ろから男の声がして、驚く。
しかし、その声の主を振り返るより前に、仁菜の額からぺりぺりという音がした。
同時に、皮膚がつっぱっていた感覚がなくなる。
「うん、脳波正常。よかったよかった」
そんなのんきな声とともに、視界に白い白衣のようなものが現れた。
それを着ていた声の主は、仁菜の頭上でなにやら機械を操作しているらしい。
ピコピコという電子音が聞こえる。
「あの……」
「動かないで。まだ、心拍数を図る装置をつないだままだから」
「はあ……」
「うん。いい子、です」