ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「もー、うるさいー」
「とにかく邪魔だし、全員殺しちゃう?」
「まず、弓持ったやつと、あの女の子」
「だね」
ルカとロカが鳥の背の上で立ち上がり、カミーユと仁菜をロックオン。
二人が向かい合って両手をパンと合わせると、その間に黒いモヤのような固まりが現れた。
「させません!」
カミーユが攻撃されるより前に矢を射るため、ギリリと弓を構えた。
そのとき……
『アレク……?』
泉の中から、声がした。
敵に向かっていたアレクが、ハッと振り向く。
「エルミナ……?」
仁菜も驚いて、涙をぬぐった。
その目の前で、水面がゆらゆらと動き、盛り上がる。
やがてそれは、人の形になった。
(きれい……)
仁菜は一瞬、全てのことを忘れて、その水でできた人形に見とれた。
それはアレクが話してくれた、エルミナの姿そのものだったのだ。
「なんなの、あれー」
ルカとロカがエルミナを発見。
「お前らの相手は、俺たちだ!」
ラスが声を張り上げる。
すかさずカミーユが、矢を放った。
敵はそれをよけ、地上に飛び降りる。
「もーっ、弓嫌い!」
「人間、大嫌い!」
二人は再度手を合わせ、黒いモヤを生みだす。
「ここは俺たちに任せて!
アレクとニーナは、ハヤテを……!」
ラスが言い終わらないうちに、ルカとロカの手から、黒いモヤが弾丸となって放たれる。
仲間たちは、それぞれの武器を構え、着弾の煙の中を、恐れずに敵に向かっていった。