ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「やぁっ!!」
ラスは風のように煙の中を駆け抜け、ルカの体を狙い、レイピアを突き出す。
しかしルカはそれをひらりとよけ、バランスを崩したラスの背に、黒いモヤを撃ち込んだ。
「ぅわ……っ!!」
ラスはそのまま押し出されるように、地面に叩きつけられた。
「ラス様!!
おのれ……魔族め!」
シリウスはラスを助け起こすと、怒りに燃えた瞳で敵をにらむ。
「私が相手だ!」
シリウスはムチを握り、同時に飛びかかってきたルカとロカに向かって、思い切り振り上げる。
風を切り、しなったムチは、完全に彼らの体を分断したと思われたが……
「うひゃ!」
「あっぶない!」
ルカとロカは、驚くほどの反射神経で、同時に飛び退く。
かすり傷を負っただけで、なんとか致命傷を避けた。
「ちっ!」
見た目より手ごわい二人の敵に、仲間がかき乱される。