ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・伝説の剣
(みんな……!)
仲間たちの背中を見つめる仁菜の横で、アレクはぼう然とエルミナの亡霊を見つめる。
まさか、こんな形で再会することになろうとは。
「エルミナ……」
自分のせいで、彼女は悲しみの淵に沈んでしまったと、アレクはこれまで自分を責め続けてきた。
いくら後悔しても、しきれない。
うずくのは、古い傷跡。
失ったのは、左目の光じゃない。
アレクが生きていく上で、もっとも大事なものだった。
「エルミナ……すまなかった……
俺は無力で、何もできなかった……」
アレクは水と化してしまったエルミナを、深紅の隻眼で見つめる。
もう、彼女の実体は、この世にはない。
「エルミナ、頼む。
さっき泉に飛び込んだ俺の仲間を、返してくれ」
仁菜もエルミナを見つめる。
しかし、返事はない。
エルミナはただ、涙で潤む瞳で、アレクだけを見つめていた。
そんなエルミナに、アレクは懇願する。
「頼む。俺が代わりに、どんな呪いでも罰でも受けるから。
関係のないハヤテは、返してくれ」
『…………』
「俺がキミに、頼みごとをできる立場じゃないことは、わかってる。
でも……頼む、俺はキミにどんな償いでもするから……」
仁菜は黙って、アレクの苦しみに歪む横顔を見つめる。
そんなアレクの真剣な願いに、エルミナは……
『私が聞きたいのは、そんな言葉じゃないわ……』
首を、横にふった。