ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……じゃあ、どうすれば……」
アレクは言葉を詰まらせてしまった。
そんな二人を見ていて、仁菜はあることに気づく。
(違う……)
エルミナの瞳に浮かぶのは、悲しみや憎しみじゃない……。
(……私と、一緒だ)
川に飛び込もうとした日の朝。
あの日鏡で見た、自分の目と同じだ。
「アレクさん……違います」
仁菜の小さな声に、アレクは反応する。
「エルミナさんがあなたの口から聞きたいのは……きっと、アレクさんの気持ちなんだと思います」
「俺の……気持ち?」
アレクは怪訝そうな目で、仁菜を見た。
仁菜は立ち上がり、アレクの目を見つめ返す。
「エルミナさんは、寂しかったんだと思います……
アレクさんに会えなくて。
アレクさんに、会いたかったんだと思います」
「……まさか……」
アレクは仁菜から目をそらした。
「まさかじゃないです!
アレクさんだって、エルミナさんに伝えたかったことがあるでしょう!?
ここで言わなきゃ、どこで言うんですか!」
仁菜は声を張り上げる。
するとアレクはボソボソと反論した。
「それは、あるけど……」
そんなアレクの煮え切らない態度に、仁菜はぶち切れる。
「あのねえ、女の子はちゃんと言葉に出して欲しいんですよ!
好きなら好きって、言ってくれなきゃわからないときだってあるんです!
言ってくれるだけで、安心することだってあるんですよ!」
恋愛偏差値0のくせに、仁菜はアレクの襟首をつかみ、怒鳴りつけた。