ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(恋愛の経験はないけど……
寂しい気持ちは、誰より理解できるんだ)
自分が自分を、見失ってしまったとき。
誰かに、『大丈夫だよ。愛してるよ』って、言ってほしかった。
それは仁菜の場合は、両親だったのかもしれない。
あるいは、友達だったのかも。
口に出してくれなくてもいい。
ただ、ちょっとした励ましの言葉だとか、そばにいてくれるとか。
そんなことでも、自分を世界につなぎとめるにはじゅうぶんで。
誰かに、そうしてほしかった。
「そ、そうか」
仁菜の迫力に押され、アレクは思わずうなずく。
そして、エルミナに向き直った。
「エルミナ」
『アレク……』
「……愛してるよ。今でも、キミのことを」
アレクの低い声は、仁菜の胸にも温かく響く。
それはきっと、偽りのない、真実の言葉だから……。
そして。
『……私もよ、アレク』
アレクの言葉を聞いたエルミナは、優しく微笑んだ。
その瞳から、涙が一粒、水面に落ちて波紋を作った。
『あなたが来てくれるのを、ずっと待ってた』
「え……」
『あなたはきっと、誤解しているわ。
他人が何と言おうと、私はあなたの気持ちを疑ったことはなかった。
あなたがランドミルに帰って、それを追おうとしたわ。
だけど、周りがそれを許してくれなかった。
もうあなたに会えないという絶望が、私を沈ませたのよ。
寂しかった……全ての光が、見えなくなった気がした』