ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(そんな……)
仁菜は泣きそうになった。
どうして、愛し合ってた二人が引き裂かればければならなかったんだろう。
アレクも、泣きそうな顔をしているように見えた。
「バカなことを……」
『本当よね。私も今なら、そう思う。
死んだりするんじゃなかった。
生きてさえいれば、またあなたに抱きしめてもらえたのにね』
「エルミナ……」
『でも、ひとつだけ誉めてほしいの。私、これだけは守ってきたのよ』
エルミナはにこりと笑う。
すると、彼女の足元の水面から、突然何かが飛び出してきた。
ぱたぱたと、水滴がアレクと仁菜に降り注ぐ。
月明かりに照らされ、銀色に輝く水滴の粒。
その向こうに見えたのは……
『伝説の剣よ。
きっとこれを得るため、あなたは再びここに来る。
そう信じてた。ううん……願ってた。
だから、何者にも渡さないように、がんばったのよ』
エルミナは剣を取り、アレクに差し出した。
その柄は赤く、王の祖先の石と見られるものがはめ込まれている。
刀身は両刃で、仁菜の下半身くらいの長さがありそうだ。
(大きな剣……こんなの、颯に扱えるのかな?)
そう考えて、仁菜は思い出した。
アレクとエルミナの大人の雰囲気に飲まれ、颯のことをすっかり忘れていた。
しかも。
「あーっ、剣だー!」
「剣、ほしいのー!」
ルカとロカに、早速見つかってしまった。
さっきから仁菜たちの背後で戦いの物音はしていたが、こちらもすっかり忘れていた。