ヤンキー君と異世界に行く。【完】
次の日の朝……
仁菜と一行は、セードリク王に客としてもてなされていた。
魔族を追い払い、泉の呪い(正しくは、エルミナの呪縛を)解いたという功績が認められたのだ。
天然の野菜を使った朝食を振る舞われたあと、セードリク王が初めてアレクに頭を下げた。
「アレク殿、すまなかった。
全ては我々の人間を憎む歪んだ心が起こしてしまったことだったのだな」
エルミナの死の真相を知ったセードリク王は、しょぼんとうなだれていた。
「いえ……」
アレクは静かに、首を横にふった。
(ちょっと可哀想……自分のせいで娘さんが死んだようなものだもんね)
仁菜は少し、王に同情した。
自業自得とはいえ、娘を死に追いやったと認めるのは辛いだろう。
「とにかく……その剣は差し上げよう。
エルミナがそなたたちのために守ってきた剣だ」
「ありがたく頂戴いたします」
シリウスは当然だという顔で、剣を颯に渡した。
伝説の剣は、精霊族が作ってくれた鞘におさまっている。
「颯、それ扱えるの?」
仁菜は乾いて綺麗にされた特攻服に身をつつんでいた。
「ヨユーヨユー。
金属バットくらいのもんだぜ」
颯は笑って、それに黒い石が埋め込まれた指輪をかざす。
その指輪は精霊族から譲られたもので、仲間の石と似たような役割を果たすらしい。
颯が『おさまれ』と思えば、剣は吸い込まれるように、指輪の中へおさまった。
(すっかり異世界になじんでる……)
仁菜は颯の順応性に感心するばかりだった。