ヤンキー君と異世界に行く。【完】
4.砂漠の民
・変装
……そうして、2日かけて来た道を戻ってきた一行だったが……
「あった!」
ラスが、異世界バイクを隠していた岩に駆け寄る。
(これで、一回お城まで帰れるよね……)
がんばって歩いて、足がパンパンの仁菜は、ホッとした。
けれど……
「え……ウソだろ!?」
ラスの困惑した叫び声が響いた。
驚いた仲間たちが急いで駆け寄ると、そこには……
「うっわ……!」
「…………!」
仁菜と颯も、言葉を失う。
そこにあったのは、ベッコベコに凹まされた、異世界バイクだった。
「ひでえ……どこのチームの仕業だ!?」
「異世界に暴走族は颯だけだよ……たぶん」
「じゃあ誰だよ!」
颯は憤慨し、ベッコベコのバイクを優しくなでなでした。
「痛かっただろうな……よしよし」
そんな颯を無視し、大人たちは砂漠の真ん中で会議を始める。
「そういえば、あの双子がこれを見かけたようなこと、言ってましたね……彼らの置き土産というわけですか」
カミーユが汗でずれたメガネを直しながら言う。
「一度、起動してみようか」
アレクがバイクをポンポンと叩くと、それはよろよろと宙に浮いたけれど……
「……かろうじてという感じだな」
「燃料タンクが損傷しているといけない。長距離移動は危険です」
「どーすんのさ、シリウスぅ~」
もう歩けないよう、と抱きついてきたラスをなだめながら、シリウスは胸からスマホのような機械を取り出す。
それはコンパスのようなもので、周辺の地形や方角を確認することができた。