ヤンキー君と異世界に行く。【完】
やがて一行は、砂漠の民の集落にたどり着いた。
「あれは……?」
砂漠の中、点々とある石作りの住居の間にぽつぽつと生えた草木。
それらに取り囲まれるように、ひときわ大きな建物があった。
ランドミルのような近未来的な建物ではなく、古代エジプトのものに似ていると、仁菜は思った。
「権力者の住居っぽいね」
ラスが言うと、シリウスがうなずく。
「その横にある大きな建物は神殿でしょう。
屋根についているトカゲが、砂漠の民の守り神です」
たしかに、神殿の屋根にはトカゲの巨大な像が乗っかっていた。
でもそれは、アニエスベ○のあのトカゲじゃなくて……
「なぁニーナ、あれって……」
「エリマキトカゲ、だね」
颯は『異世界にもエリマキトカゲっているんだな』と驚く。
いやいや、そこじゃないでしょ。
たしかにエリマキトカゲそっくりのそれは、神殿の屋根にどっかりといた。
腹ばいじゃなくて、マヌケに走っている姿で。
(意味わかんない……)
両足を外側に広げてバタバタとマヌケに走るあれが、どうやってこの集落を守ってくれるんだろう……。
「とにかく、ラス様がランドミルの王族だとバレないように気をつけよう」
「部品を確保したら、さっさと撤退した方が良さそうですね」
アレクとカミーユの言葉にうなずき、一行は歩みを進めた。