ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「あのう、すみません」
ある民家の前にいた、ターバンみたいなものをした男に声をかけたのは、仁菜。
異世界の人間に率先して声をかけるなんてしたくないけど、他のメンバーだと目立ってしまうのでしょうがない。
人見知りの仁菜は、思いきり作り笑顔で話しかけた。
ターバンにベージュのカーテンみたいな服を着た若い男は、不思議そうに仁菜を見た。
「なんでしょう?」
「あの、ええと、この近くに自動二輪の部品を扱っているところはありませんか?
あたしたち、遥か東から旅をしてるんですけど、自動二輪が壊れてしまって……」
「へえ、それは大変だ」
ターバンの男は特に不審がらず、仁菜の話を聞いた。
「それなら、長老様の御殿を訪ねた方がいいよ。
下々の民は、科学製品や機械を使うことを禁じられてるから、そういうものの部品はないんだ」
「はぁ……」
「長老はもしもの時のために、必要最低限の科学部品を持っているはずだから」
じゃあ、というとターバンの男は、竹で編んだようなカゴに布を入れたものを頭の上に乗せて行ってしまった。
「科学製品を禁じられてるなんて……」
ランドミルから離れているとはいえ、同じ時代で同じ種族なのに、生活は全然違うようだ。
仁菜は、少ない水で集まって洗濯を手でする人々や、畑を耕す人々を不思議な気持ちで見つめた。