ヤンキー君と異世界に行く。【完】
王族を憎む、砂漠の民。
そう聞いていたから、もっとオラオラ系の、野蛮な感じの人たちを思い浮かべていた。
だけど彼らはのんびりと、自然の生活を営んでいる。
(イメージ違ったな)
とにかく、部品をわけてもらわなければ、ここまで運んできたバイクの修理ができない。
一行は危険を覚悟で、長老の御殿を訪ねることにした。
丸太を組み、動物の毛皮で覆われたような御殿の前には、ターバンをした男二人が立っている。
仁菜は先ほどと同じ説明を彼らに繰り返す。
彼らは仁菜よりも、可愛すぎるラスをちらちら見ながら、中へ入っていった。
やがて帰ってきた彼らは、「長老がお会いになってくれるので」と、一行を中へ招いた。
「へー、意外と広いんだな」
颯が感嘆の声を漏らす。
原始的な技術を使っているように見えるそれは、ランドミルの建物よりあたたかみを感じるような気がする。
大きな広間の先は一段高くなっていて、そこに一枚の布でできたようなゆったりした服を着た老人が座っていた。
「は、はじめまして。私たちは……」
仁菜が説明しようとすると、「もう聞いたからいい」と、老人は微笑む。
頭はツルツルだけど、ふさふさのヒゲが生えていて、男性ホルモンの不思議を物語っている。