ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(とにかく、そんな怖そうな人じゃなさそう……よかった)
仁菜がほっとしているうちに、シリウスが部品をわけてもらえるように長老に頼んでいた。
「ふむ……いいじゃろう。あとで倉庫に案内させる。
その前に、風呂にでも入ってくつろいでいくといい。
お嬢さんたちが疲れきっているように見えるでの」
「では、私が案内します」
そう言って立ち上がったのは、長老の横にいた若者だった。
浅黒い肌のイケメン……とは言い難い。ごめん。
普通の顔をした若者が、一行を案内してくれるというので、おとなしくついていくことに。
彼は遠くからでは見えなかった御殿の別棟に仁菜たちを通した。
「私は長老の孫です。
お食事を用意しますので、その間に浴室をお使いください」
「それはありがたい。
しかしなぜ、行きずりの私たちにそんなに親切にしてくださるのでしょうか?」
シリウスが鋭い質問を投げかけると、若者はラスをちらりと見て、さっと目を離した。
「東方の国でも、ランドミルでも、ここでも、女性は貴重な存在。
大事にもてなさねば、天罰が下りますから」
長老の孫はラスに向かってお辞儀をし、頬を染めて去っていった。