ヤンキー君と異世界に行く。【完】
平静を装い、ラスと仁菜は同じ浴場へと入っていった。
そこには銭湯のように、脱いだものを入れるかごが置いてあり、新しい衣服がたたまれて置かれていた。
「わーお、すけすけ。これじゃごまかせないや。どうしよっかな」
ラスはその、アラビアンナイトに出てくるお姫様のような服をつまみあげ、困った顔をする。
(困るの、そこじゃないでしょうよ!)
ちょっとのぞいて見てみたら、古代ローマのお風呂みたいな浴槽が目に入った。
石でできているそれは広くて、本当に銭湯か温泉みたい。
ああ、手足を思い切りのばして、お風呂に入りたい。
だけど……。
「あの……ラスさん、お先にどうぞ……」
一緒に入るわけには、絶対いかない。
「え、なんで?一緒に入ろうよ」
「は!?む、ムリでしょ!」
「でも城では、乳母と一緒に入ってたよ?
ダメなの?どう違うの?」
乳母と一緒って……それ、赤ちゃんのときでしょうが!
仁菜は呆れる。
ラスは人の心をどうつかむか、知り尽くしているようでいて、信じられないくらい純粋なときもある。