ヤンキー君と異世界に行く。【完】
それは多分、ラスが王子だから。
人心を掌握する術を学ぶ一方で、自由は制限される。
だから世間のことを知っているようで、あまり知らないのかも。
「あのね、大人になったら、簡単に異性に裸を見せちゃダメなものなの。常識なの」
だから、携帯住居でもあたしだけひとりだったわけでしょ。
そう説明すると、ラスは大きくうなずいた。
「そうか!俺がニーナに欲情すると、困っちゃうからだね!」
仁菜はずっこけた。
なに大声で欲情とか言ってるのー!
「そうだよね、そういうことは結婚してからだよね。
でも男には本能ってやつがあるから困っちゃうんだって、シリウスが言ってた」
仁菜は二の句がつげず、金魚みたいに口をぱくぱくさせるだけだった。
(シリウスさん、意外にそういうこと教えてるんだ……)
って、そういうことではなくて。
「大丈夫だよー。俺、そんな野獣に見える?」
かつらをとり、口紅を手の甲で乱暴にぬぐうラス。
その目はどこか挑戦的で……初めて彼に感じた色気に、どきりと胸が高鳴る。