ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(どうしてこうなっちゃったんだろう……)
天使の笑顔に丸め込まれて、浴槽へつかったのはいいけど。
(もうお嫁にいけないよ)
いくら可愛くても、相手は男の子。
仁菜は身動きがとれないくらい、緊張していた。
幸いお湯は乳白色で、布で隠した体は、簡単には見えないけれど。
(なんでちゃんと断れないんだろう……いつもそうだ)
中学受験だって、別にしたくなかった。
高校だって、最初から名門私立なんかじゃなくて、普通の公立で良かったのに。
他にも、クラスの当番を決めたり、委員を決めたりするとき、仁菜はいつも損な役をおしつけられていた。
自分で「これをしたい」「これが好きだから」と決めてこられたことは、気づけば驚くほど少ない。
浴槽の端にいるラスをちらりと見ると、鼻歌なんか歌ってる。
はあ、とため息が出た。
あたしも、お姫様だったら、もっと堂々とできるのかな。
そんなことを思っていると……。
「うおーい!ニーナ!
なんもされてねえだろうなー!?」
高い壁の向こうの男湯から、颯の叫び声が。
浴場だからか、やけに大きく響く気がして、焦る。
「だっ、大丈夫だよ!女の子どうしなんだからっ!」
言い返すと同時、あちらでお湯のはねる音がした。
みんなで颯が余計なことを言わないように、押さえつけているんだろう。
「なんかあったら、大声だせよー!」