ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ハヤテ……ああ、一緒にいた男の子ですか?
黒髪に、桃色の髪が混じった」
「そうっ、その子です!」
「まあまあ、慌てないでください。
彼なら大丈夫ですよ。
男の子だから、別室にいるんです」
20代だと思われる白衣の男の落ち着いた物言いに、仁菜の心は落ち着いていく。
「無事、なんですね……」
「はい。さて、では彼のところに案内しますので、これをどうぞ」
男が差し出したのは、川に落ちたときに仁菜が着ていた衣服。
制服の上に、ソックスやブラやショーツまで丁寧に折りたたまれて乗っている。
それを見て、仁菜は思わず起き上がってしまっていた自分のあられもない格好に、やっと気づいた。
「ぎゃああああああああっ!!」
いそいでシーツで体を隠したが、白衣の男は少し呆れたように笑っただけだった。
そして、何も見ていないように、黙って立ち上がり、ベッドの周りのベージュ色のカーテンを閉めた。
「できたら、呼んでくださいねー」
のんきな声だけが外から聞こえる。
(お医者さん相手に恥ずかしがってしまった、自分が恥ずかしい……!)
仁菜はとてもいたたまれない気持ちで、着替えをしたのだった。