ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ぎくり。
動きを止めたのは、颯と仁菜だけだった。
「もちろんですわ」
にこりと笑うラス。
「でも、あの自動二輪は、ランドミル製では?」
孫がおそるおそる聞く。
(あたしたちをお風呂に入れておいて、バイクを調べたんだ)
不愉快な思いを顔に出さないように、仁菜はうつむいた。
「ええ、そうですわね。
商人に便利だと騙されて、買ってしまいましたの。
でもやっぱり、ランドミル製品はダメですわね」
「と言いながら、直してお使いになると」
「だってそうしなければ、国に帰れませんもの」
ラスは眉ひとつ動かすことなく、完璧な微笑みをたたえたまま、次々に嘘を並べる。
(ラスってば、立派な詐欺師になれそう……)
黙って成り行きを見守っていた仁菜の前で、長老の孫が突然席から立ち上がった。
そして。
「あのっ、お嬢さん」
「ララと申します」
ラスは自分でそう名乗った。
「ララ様、もしここがお気に召したのであれば、ずっといてください」
「……え?」
思わず低い声が出てしまったラスを、シリウスが肘でつつく。
(どういう意味?)
仁菜が見た長老の孫は、赤い顔をしている。