ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「私はあなた様に一目ぼれしてしまいました。
どうか、私の妃になってください!」
「ええー!?」
そんな、いきなり!?
仁菜は思わず声を上げてしまったが、誰も不審に思わなかったようだ。
「侍女殿が驚かれるのも無理はない」
長老はひげをなでて言った。
一行は顔を見合わせる。
困ったことになった。
「で、でも私、あなたとは身分が違いますわ。
私はただの平民で……長老様のお孫さんに嫁ぐなど、とてもとても」
「なんだ、そんなこと気にしないでください。
ここはただの小さな集落で、長老と言えども、ランドミルの王族のように威張ってはおりません」
孫は冗談を言ったつもりなのだろう。
人の好さそうな顔で笑う。
ラスは彼らに見えないように、ちっと舌打ちをした。
(面倒くさいことになったうえに、軽くディスられたんだもんね……)
自分が侍女だと決めつけられたのも、軽くディスられたんだろうけど、気づかなかったことにしておこう。
ため息をつくと、仁菜にも火の粉が降りかかってきた。