ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「良ければ侍女殿にも、ここにいてほしい。
私の弟の花嫁になっていただきたい」
「えっ、あたしっ?」
ってか、弟ってだれ?
と思っていると、孫の後ろからぬうっと大きな影が出てきた。
太っていて、背が大きい。
まるで熊の化け物みたいだけど、一応人のようだ。
「長老一族の血を、少しでも多く残したいのです。
しかし弟はここの娘では満足できないと申しまして」
アホか!お前が女子を選べる立場か!?
思い切り罵倒したい思いを必死で我慢して、仁菜はいつの間にか近くに来た弟を見上げる。
やっぱり熊みたいで、顔は全てのパーツが小さくて、ぼんやりしていた。
「お、おれ、この子に決めた。嫁にする」
くぐもったような声は、思ったより幼く聞こえた。
って、そんなことより!
「か、勝手に決めないでください~!」
おかしい、おかしいったら。
女の子が少ないってことは、こっちに選ぶ権利があるんじゃないの?
「す、好き。お前、可愛い」
熊っぽい弟は、顔を赤くする。
なんという兄弟!告られてもほめられても嬉しくない~!
どうしようと思っていると、突然手をつかまれ、椅子から立たされた。
腕が抜けそうな勢いに、思わず声が出る。