ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「痛い……!」
それで我慢できなくなったのは、やっぱり勇気りんりんのこの男。
「おいっ、熊野郎!ニーナを離せ!」
颯だ。彼の黒い指輪が光る。
ここで伝説の剣なんか出したらダメだってば。
叫ぶ前に、アレクが颯を抑え込んで止めてくれた。
しかし、事態は一触即発。
そこでシリウスが、がたんと椅子から立ち上がり、ラスの手を取った。
「申し訳ないが、ララは私の大切な妻です。
その申し出に答えることはできない」
……!
味方も思わず息をのんだ。
そうきたか……!
人妻だと言えば、強引に手に入れることはできないはず。
あ然とする長老の孫に見せつけるように、ラスはシリウスにぴたりと寄り添う。
「申し訳ありません、言う機会を失っておりました」
その姿はいつもの自然な姿であり、違和感がない。
(お、お似合いすぎる……!)
鼻血が出そうだけど、ここで腐に走っちゃダメ。
自分はどうする?
(誰か、同じ嘘をついてくれれば……)
ばちりと目があったのは、アレク。
ああ、大人な彼ならきっと……。
「ニーナは俺んだ!さっさと離せ、熊野郎っ!」
……颯……。
違う、違うの。
アレクさんの「ニーナは俺の花嫁だ」って言うのが聞きたかったの。