ヤンキー君と異世界に行く。【完】
がっかりする仁菜を横目に、カミーユが必死でフォローを入れる。
「えーと、彼らは若いですが、すでに婚約しているので……」
シリウスとラスなら、ちゃんとした大人と幼い妻。
だけど颯と仁菜だと、子供どうしにしか見えない。
弟もそう思ったのか、首をかしげる。
「ほ、本当に?お前、このバカのこと、好き?」
バカって。あんたたちだって、そうとうバカじゃない。
颯のこと、何もしらないくせに。
自分でボロクソ言うのはいいけれど、他人に言われるのは腹が立つ。
「す……好き、よ」
小さな声で言い返すと、カミーユが笑顔でうなずいてくれた。
よくできました、という意味らしい。
「で、でも、婚約なら、解消できる。
おれの嫁になって。
一生不自由はさせないから」
熊っぽい弟はなかなか引き下がらない。
それに、にぎられた手が、本当に痛い。
「お前っ、いい加減にしろよ!」
颯はアレクに止められているが、今にも噛みつきそうな顔をしている。
どうしよう。
カミーユも困った顔をしている。
仁菜はとっさに、嘘を思いついた。
これなら、いけるかも……。
決心して、大きな声を出すため、息を思い切り吸い込んで、吐いた。
「あたしっ、彼の子供を妊娠してるの!
本当よ!赤ちゃんに障るから、離してちょうだいっ!」