ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・バレた!
仁菜は集落のすみっこのテントに、カミーユと二人でいた。
「ひどいですね、みんな行っちゃうなんて」
「いいんですよ。これが僕の仕事ですから」
異世界バイクの表の装甲をはがし、中の機械をいじくりながら、カミーユは笑った。
仁菜が見てもさっぱりどこをどうしていいのかわからないけど、カミーユは迷うことなく、その中からひとつの部品を抜き取る。
「ニーナ、すみませんが新しい部品をください」
「あっ、はい」
仁菜が指さされた部品を手渡すと、カミーユはそれを器用な手つきで中身に装着していく。
蒸し暑いテントの中での作業で、せっかく風呂に入った彼の額に、たちまち汗が浮かんだ。
他の仲間と言えば、ラスとシリウスはこの集落の植物の種子を採取しにいくと出ていき、颯はアレクに剣の稽古をつけてもらうとはりきっていた。
カミーユはバイクの修理を3台分、大急ぎでしなくてはならない。
汗が額から落ちたのか、彼はメガネをはずし、手で顔をぬぐう。
そのとき、手袋についた工業用油が顔についてしまい、カミーユの頬が汚れた。
「あの、よかったら……」
仁菜は持っていたハンカチを差し出す。
カミーユは笑って、「ありがとう」とそれを受け取った。
(素顔、初めて見た……)
メガネをはずすと、見た目が少し幼い印象になる。
翡翠色の瞳は、彼が笑うと見えなくなった。