ヤンキー君と異世界に行く。【完】


白衣の男に連れられ、仁菜は部屋の外へ出る。


どうやら、ここは相当大きな病院らしい。


どこもかしこも壁で、窓というものに行き当たらない広い廊下。


(……変だな……)


ドアは無数にあるのだけど、他の患者や、看護士の姿が見えない。


(……それだけじゃ、なくない……?)


全身無事ということは、そう遠くまで流されたわけではないだろう。


あの川の付近を捜索すれば、買ったばかりのバッグが見つかるし、生徒手帳を投げ入れていたから、自分の身元はすぐにわかるはず……なのに。


両親が来てないなんて、おかしい。


自分が何も言わなければ自殺しようと思っていたことはわからないし、
普段愛情のないあの親だって、娘が死に掛けたのを放っておくほど常識はずれではないはず。


なのに、どうして……


──ぼふっ!


「きゃんっ」


「つきましたよ」


……どうやら、考え事をしていたせいで、前を歩いていた白衣の男の背にぶつかってしまったらしい。


(重ねがさね、すみません!)


目の前の大きなドアを開ける男に、仁菜は心の中で謝った。


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