ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……すみません。あたし、何もできなくて……」
ラスとシリウスは完全に仕事だし、颯でさえ戦闘の役に立つために稽古をしてるのに。
「いえいえ、そこでその格好でいてくれるだけで、癒しになりますよ」
カミーユは珍しく、そんなことを言った。
自分の格好を思い出し、仁菜は赤面する。
そういえば、いつもより布の面積が少ないんだった。
(でも、癒しになんかなるわけないのに……)
ラスみたいな全身宝石みたいな美少女ならともかく、自分はごくごく普通の、一般的な日本人だ。
「僕も、これくらいしかみんなの役に立てませんからね。
しっかりやらなきゃ、です」
部品の取り換えが終わったのか、カミーユはべこべこにへこんだ装甲に金属を当て、カナヅチのようなものでトンテンカンテンと叩く。
暑さのために衣服を脱ぎ、薄い肌着一枚の彼の背筋は思ったよりしっかりしていて、仁菜は見とれてしまう。
「そういえば、弓を扱えるんでしたよね。
だから背筋がすごいんだ……」
それに意外と腕の筋肉もある。
「あはは、えっちな人ですねえ。どこ見てるんですかー」
「なっ……」
「なんて、冗談です。
弓は使えますが……接近戦ではほとんど役に立てないんですよ、僕は」
カミーユは笑いながらも、修理の手は止めない。