ヤンキー君と異世界に行く。【完】
しかし彼は伏せていた顔を仁菜にむけると、いつものように笑う。
「でも、そう言ってくれると、すごく嬉しい」
翡翠のような緑の瞳が、また見えなくなった。
胸が苦しくなる。
「……あたしなんか、本当に何もできないんです。
元の世界でも、勉強しかできなくて。でもそれも中途半端で、親の期待に応えられるほどじゃなくて。
こっちの世界で『成績』で評価されることがなくなったら、あたしなんか……」
役立たずもいいところだ。
それどころか、みんなの足手まといでしかない。
声がつまってしまうと、カミーユが手袋をはずし、その大きな手で、仁菜の頭をなでた。
「……僕たちは、似ているのかもしれませんね」
「……そう、でしょうか……?」
似てないと思う。
カミーユは実際みんなの役に立っているけど、自分は違うんじゃないか。
「ニーナは、運命の花嫁です。
誰かを確実に、幸せにできる」
そんなの。
智慧の塔に神様が勝手に書いただけ。