ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「「はあ……」」
長老の孫兄弟は、一緒にため息をついた。
やっと見つけた異国からの娘に、求婚を断られてしまったからだ。
ランドミルから離れた人間でできたこの集落では、同じように女児の出生率が低い。
だから、異国の女性の血を混ぜて、少しでも出生率が上がればと思っていたのだけど……。
それに、それぞれラスと仁菜の見た目に惹かれたのも、嘘じゃない。
「はて……どこかで見たような……」
長老が、ひげをなでて天井を見上げる。
「何のお話ですか、長老」
「いや……あの一行の中に、緑の髪の男がおったじゃろう?」
「メガネのですか?」
「そう……あの男、見覚えがあるような……」
長老にはたびたびこんなことがある。
かつてはランドミル王家に反旗を翻し、悪夢のような戦乱の世を抜けてきた男も、今となっては普通のおじいちゃん。
物忘れがひどくなってきたなぁ、大丈夫かなぁ、と周りは心配している。
「……ああ、そうじゃ……!」
「食事なら、さっきとりましたよ」
「そうではないわい!」
長老は、持っていた杖で孫の頭を殴った。
「どうして気づかなかったんじゃ……!」
そして、自分の額を手のひらで打った。