ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「とぼけるなっ!
その髪、その顔、忘れはせんわ!
まだあんな自然に逆らったことをやっておるのか?」
「ですから、なんのことだか……」
「『女神』のことに、決まっておるじゃろう!」
女神?
いったい何のことだろうと思っていると、長老は続ける。
「お前たちは、人工の子宮を作る研究をしておった。
女性から受精卵を取り出し、それを培養し、遺伝子操作を行い、女児を増やそうとしておった」
人工の子宮。
そんなもの、仁菜には想像もつかなかった。
(なにそれ……)
カミーユの笑顔が、だんだんと厳しくなっていく。
「カミーユの祖父母は、本来なら受精した瞬間に決まる男女の遺伝子をむりやり操作し、人工の女児を増やそうとしたんだ」
アレクがわけのわからない颯と仁菜に、小声で説明する。
ということは、長老が話しているのは本当のことらしい。
(カミーユさんのおじいちゃんとおばあちゃんは、人工的に女児を増やす研究をしていた……)
仁菜がいる世界では、とても政府の許可がおりないだろう研究だ。
「しかし、できたのはただの肉塊ばかりじゃった。
彼らに意識はなく、体もぶくぶくと膨れ上がるだけで、人の形にはならんかった。
そうして受精卵を無駄使いし、普通に生まれることのできるはずだった命まで、奪ったんじゃ」
長老が、悔しそうにこぶしを握る。
「……お前らをランドミルに返すことはできん!
天に逆らうものたちに死を!」
彼が叫ぶと、孫や若者たちが武器をかかげてこちらへ向かってくる。