ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「待てよ、王族は俺だけだ!
殺そうっていうなら、俺だけにしろ!」
ラスが叫び、腕輪からレイピアを取り出す。
そんな彼は、背が小さくても、見た目が女の子みたいでも、たしかに人の上に立つ主君の血を引く王子だった。
「……一人で格好つけないでください。
彼らの恨みを買っているのは、僕の祖先も同じです」
カミーユが静かに言うと、彼は弓を取り出す。
もちろん他の仲間が黙っていられるわけもなくて、それぞれ武器をかまえる。
(ちょっと待ってよ!)
こんなの、変。
なにか意味がある?
精霊族はまだわかる。大切なお姫様が、アレクのせいで死んでしまったのだと思い込んでいたのだから。
本人が現れて、黙っていられるわけがなかった。
(だけど、この人たちはなに?)
何代も前のの恨みごとを子孫に言って、その命を奪って、誰が得をするのか?
「ハヤテ、ニーナを連れて逃げろ」
シリウスが指示を出す。
(ちょっと待ってよ、また蚊帳の外にするつもり?)
敵はもう目前。
彼らの武器が、重なり合おうとしたとき。