ヤンキー君と異世界に行く。【完】
どんな思いで、彼は今まで生きてきたんだろう。
どんなに苦しかっただろう。
いきなり取り残されて、ひとりで。
「女神の研究は、今どうなってるんだ?」
颯が遠慮がちに聞く。
おバカでも、飲み込みが早くなってきたみたいなこのごろ。
「他の研究者に引きつがれました。
僕は『女神』を使う気はありません。
自然のまま、なんとか女性の出生率を上げる方法を考えているところです。
おかげで成果はまったくで、王ににらまれていますが」
それを聞いて、二人はほっとする。
『女神』には何かカミーユの一家を呪縛するような力があるように思えたから。
祖父母や両親の無念を晴らしたい気持ちはカミーユにもあるだろうけど、彼にはそんな研究にとりつかれてほしくない。
「でもラス様にかばっていただき、なんとか今の地位を保っている次第です」
またラス。
アレクも、ラスに拾われたとか言っていた。
「俺、捨てられた子見るとすぐ拾っちゃうんだ」