ヤンキー君と異世界に行く。【完】
にっと、ラスが笑う。
(なにそれ。犬や猫じゃないんだから)
でも、二人がラスの存在に救われたのはたしかなんだろう。
(みんな、偉いなあ……)
今まで生きてきたなかで、みんながそれぞれつらい思いをしてる。
アレクやカミーユはかなり特殊な例だろうけど。
元の世界でも、誰だって、苦しいことや悲しいことを抱えて生きているような気がしてきた。
(あたしだけじゃない……)
仁菜は恥ずかしさがこみあげるのを感じた。
この人たちの苦しみや寂しさに比べれば、自分の悩みなんて、なんてちっぽけなことだったんだろうと。
(ううん、あたしだって、かなり真剣に悩んでた)
高校に落ちちゃって、かなりへこんだ。
それだけに全ての時間と労力を注いできたんだから。
だけど……。
(死んじゃおう、なんて考えたのは、颯よりバカだった……)
残される方の気持ちを考えたことなんて、なかった。
両親だってクラスメイトだって、普段は関心がない人たちでも、死んだって聞かされたら、それなりに嫌な思いをするだろう。