ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ちょっとー。俺を無視するなんて、いい度胸じゃーん?」
カツカツとこちらに近づいてくる軽快な足音がして、颯は仁菜の体を離す。
「どもー、この国の王子の、ラスでーす♪」
「……!?」
仁菜はまた言葉を失った。
緑髪の医者の次に、彼女の前に現れたのは……。
仁菜と同じくらいの身長の、見事な金髪の少年だった。
その一本一本は細くなめらかで、サラサラと音が聞こえてきそうだ。
白磁のような白い肌に浮かぶ青い瞳が、キラキラと光ってこちらを見ている。
その全身宝石のような少年に、仁菜は視線を完全に奪われた。
颯のことなんか、綺麗さっぱり忘れてしまうくらい、その少年は美しい。
全身宝石のようでもあり、今を盛りと咲き誇る黄色のバラのようなみずみずしさ。
……ただ、彼の言ってる言葉の意味が、わからない。
(王子……って?
もしかして、ちょっとイタイ人かな?)
ラスと名乗った彼が着ている服は、金モールがついた、フランス革命のときの貴族が着ていた軍服に似ていた。
黒くて彼のひざ上まであるそれのところどころに、金の糸で刺繍がしてある。