ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ニーナ!」
誰かの呼ぶ声で、仁菜は目を覚ました。
何度か瞬きをすると、目の前に見慣れた顔が見えた。
「颯……もう、朝?」
嫌な夢を見た。
あれは、高校に落ちた時の……。
ばくばくと不吉に鳴る心臓を押さえていると、颯がもう一方の手をにぎって言った。
「ちげーよ。緊急事態」
「え?」
見渡せば、部屋の中には颯以外誰もいない。
重たい体を引きずって外へ出ると、空はまだ暗かった。
全員が同じ方向を見ている。
それは、砂漠の集落の方向で……。
「あれは……?」
仁菜の目に見えたのは、赤い炎のような光だった。
「おそらく、魔族の攻撃だ」
シリウスの声が、端的に言う。
カミーユが取り出したタブレットを見て、首をかしげる。
「ランドミルからは何の情報もありません。
どうしてランドミルではなく、あの集落を襲うのでしょうか……」
「わかんねえけど、放っておけねえよ!
あいつら、普通の人間が魔族にかなうわけない!
助けに行かなきゃ!」
颯が言うが、大人たちは難しい顔をする。