ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「ニーナ!」


誰かの呼ぶ声で、仁菜は目を覚ました。


何度か瞬きをすると、目の前に見慣れた顔が見えた。


「颯……もう、朝?」


嫌な夢を見た。


あれは、高校に落ちた時の……。


ばくばくと不吉に鳴る心臓を押さえていると、颯がもう一方の手をにぎって言った。


「ちげーよ。緊急事態」


「え?」


見渡せば、部屋の中には颯以外誰もいない。


重たい体を引きずって外へ出ると、空はまだ暗かった。


全員が同じ方向を見ている。


それは、砂漠の集落の方向で……。


「あれは……?」


仁菜の目に見えたのは、赤い炎のような光だった。


「おそらく、魔族の攻撃だ」


シリウスの声が、端的に言う。


カミーユが取り出したタブレットを見て、首をかしげる。


「ランドミルからは何の情報もありません。

どうしてランドミルではなく、あの集落を襲うのでしょうか……」


「わかんねえけど、放っておけねえよ!

あいつら、普通の人間が魔族にかなうわけない!

助けに行かなきゃ!」


颯が言うが、大人たちは難しい顔をする。


< 162 / 429 >

この作品をシェア

pagetop