ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「たしかに、彼らの勝機は薄いだろう。
化学兵器なんてものは、何も持っていなさそうだったしな……」
ラスとカミーユを殺そうと襲ってきたときに彼らが持っていたのは、原始的な槍や剣ばかりだった。
戦いに長けた精霊族でさえ滅ぼされかけた相手に、かなうはずがない。
「……助ける義務はない。
彼らは、ランドミルの反乱分子だった存在だ。
それに、我らが王子に刃を向けた。そんな存在を私は助けたいとも思わない。
私は、これは彼らが彼ら自身で解決すべき問題だと判断する」
シリウスが淡々と言い放つ。
「けど……!じゃあ、あそこにいる人間を、見捨てるっていうのか?」
「颯、やめてっ」
今にもシリウスにつかみかかりそうな颯の腕に抱きつき、必死に足をふんばる仁菜。
そのとき、ラスがぽつりと言った。
「ねえ、シリウス……俺は行ってもいいよ?」
全員がそちらをハッと振り返る。
全身宝石のような少年の目に、迷いはなかった。
「行こうよ。
あそこに魔族が来たってことは、それなりの理由があるんじゃないかな。
確かめるべきだよ。
それに……見て見ぬふりってのは、性に合わない。
一緒に行ってくれるひと、この指とーまれっ!」