ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ラスが人差し指を上空に向けると、迷いなく颯とアレクがその指をにぎった。
「そうでなきゃな!」
「魔族の討伐は、もともと軍の仕事ですからね」
二人に笑顔で答えるラス。
そして、もう一人彼に近づく者がいた。
緑の髪に翡翠の目を持つ彼も、手を重ねようとする。
「カミーユ……お前は無理しなくていいんだよ?」
ラスが彼を見上げ、真剣な顔で言う。
そんなラスに、カミーユは笑って言った。
「いいえ、僕は王子についていきますよ。
あなたが僕を必要としてくれるのなら、ですが」
「もちろん、必要だよ」
「……ありがとうございます」
カミーユの手が重なった。
よかった。
誰かに必要とされることが、カミーユにとってどんなに救いになることだろう。
ラスがランドミルの王子様で、本当によかった。
(あたしは誰も救えないけど、せめて……)
精霊の盾で、彼らを守ることができるかもしれない。
仁菜は胸のピンクの石を握りしめ、行こうと決意した。