ヤンキー君と異世界に行く。【完】


ぼーっと見ていると、彼は突然仁菜の前で片ひざをつく。


そして、その赤い豪華な模様のじゅうたんの上で、彼は仁菜の右手をとった。


そして……


「待ってたよ、俺の花嫁様」


──ちゅ。


小さな音を立て、仁菜の手の甲にキスを落とした。


「……はぁ……っ!?」


「てめ……っ、離せよ!
ニーナの手にツバつけんじゃねー!」


颯が一歩踏み出すと、ラスは軽やかにたちあがり、白いマントを翻す。


その手に、仁菜の体を抱いて。


「バーカ。これは、俺のなのー。
大昔からの伝説で決まってんだから!」


べっと舌を出したラスに、颯が牙をむく。


「はあ!?
テメエ、今なんつった!?
バカって言う方が、バカなんだからなー!!」


「は?言われる方がバカに決まってるだろ?
バーカバーカバーカバーカバーカ」


「うっせえ!
バーカバーカバーカバーカバーカバーカ」


……どっちもどっち。


仁菜は颯とラスの顔を交互に見て、ため息をついた。


とにかく落ち着かないから、ラスが手を離してくれないかな。


そう思っていたときだった。



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