ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「お前が自分をどう思っていようが、俺はお前を守りたいんだ……」
初めて聞いた、颯の痛いくらい真剣な声。
その直後だった。
ついに力尽きた盾が消滅した。
颯の肩から背中にかけて、黒い剣が線を引く。
特攻服よりもすこし暗い色の、赤い花が咲き乱れた。
「うあああっ……!」
颯が悲鳴を上げた。
そのままくたりと仁菜の上にのしかかり、二人は地上に倒れこむ。
(颯……!)
颯が、斬られた。
(どうして?どうしてなの、颯……)
目の前が暗くなっていく。
「死ねよ、人間」
颯を斬ったカフカは、剣を逆手に持ち直し……颯の背中に突き立てようとする。
切っ先が、その体を貫こうとした刹那。
「い……いやあああああああっ!」
高い叫び声が、響き渡った。
それと同時に、ピンク色の光が仁菜の石から放出され、あたりが昼間のように明るく照らされた。
その太陽の輝きにも似た光にくらみ、カフカは手首を切り落とされた片腕で、目を覆う。
「なに……っ?
小娘め、いったい何を……」
目が慣れてきたと思ったカフカが見たのは、銀色の盾だった。
2枚の翼が彫られた盾は透き通っていて、その向こうに人間の女が涙を流しながら自分をにらんでいた。
──この銀色の光は、ヤバい。
カフカが思うと同時、盾が彼に向かって烈光を放つ。