ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ち……っ、今日はひいてやる。
感謝しろよ、人間!」
バチバチと白い火花が舞う中、カフカは突然空間に現れた闇の渦の中へと、姿を消した。
仁菜はその瞬間、体中から力が抜けていくのを感じる。
そして、自分に寄りかかる颯の体を抱きしめた。
それは力なく、だんだんと冷たくなっていく……
そんなの、いや。
ダメだよ、颯。
あたしを置いていかないで。
ぼろぼろと、涙があふれて止まらない。
「これは……!」
聞き覚えのある声がして、仁菜は顔を上げる。
そこには、比較的軽症のカミーユがいた。
「カミーユさんっ、颯が……!」
すがるように言うと、カミーユは颯の傷をのぞきこむ。
「どうしよう、颯が、颯が、あたしを守って……!」
状況を説明しようとするのだけど、のどから出るのは悲鳴ばかり。
そんな仁菜の頬を、カミーユは軽く平手でたたいた。
ぱちん、と乾いた音がした。
「ニーナ、しっかりしなさい!
あなたは怪我はありませんか?」
「あ……ありま、せん」
「じゃあ、僕の手助けをしてください。
早くしないと、全員手遅れになる……!」
カミーユは颯を抱き上げると、うつぶせに寝転がらせた。