ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ニーナ、怪我人はみんなここへ集めて。
まだ動ける人も呼んできてください。
残っている薬に包帯、あと清潔な布と、お湯を大量に沸かして持ってくるように。
早く!行きなさい!」
普段では見せないカミーユの厳しい表情と声で、仁菜はやっと自分を取り戻した。
泣いている場合じゃない。
人に頼り切っていてもダメ。
(みんなを助けたいなら、あたしががんばらなきゃ……!)
「颯、がんばって。
すぐに戻ってくるからね……!」
仁菜は颯の手をにぎると、すぐに離した。
胸が引き裂かれるように痛いけど、今はカミーユを信じるしかない。
(大丈夫。
バカは簡単に死んだりしない!)
そう自分に言い聞かせ、仁菜は走り出した。