ヤンキー君と異世界に行く。【完】
颯は目を丸くして……次の瞬間、ぶーっと吹き出す。
「ははっ、なーんだ。
エロいこと頼もうと思ったのになぁ。残念」
全然残念じゃなさそうじゃん。
そんなこと、考えてなかったんでしょ?
(なんかあたし、自意識過剰女みたい……)
真っ赤になる仁菜の前で、颯は笑いをこらえていた。
いつもみたいにバカ笑いすると、傷にひびくらしい。
「やっぱいいわ。もー忘れた」
「うそ」
「いいんだって。
どうせ帰ったら、俺たち他人だもん」
そう言って突っ伏した颯の顔は、見えなかった。
帰ったら、他人……。
そうだよね。
今までだって、お互いに無視してた。
中学は同じだったけど、ヤンキーになってしまった颯とは、一言も話さなかった。
彼の周りにはいつも、同じようなヤンキー仲間がいて怖かったし、全員おそろしくダサかったから。