ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・王子の独り言
颯の病室を出て、他の仲間がいるはずの広間へ向かおうとする仁菜。
(普通の顔をしなきゃ)
颯に冷たくされたって、別に困らない。
さみしくなんか、ないんだから……。
と、うつうつと考えながら歩いていると。
「わっぷ!」
ぼんやりしていて、誰かにぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
仁菜は深く頭を下げて謝る。
ここはランドミルのお城の中であって、ラスの他にも王族が住んでいる。
だから、振る舞いにはくれぐれも気をつけるようにシリウスに言われていたのに。
「大丈夫だよ。君こそ、怪我はない?」
聞いたことのない声。
その優しい響きに安心して顔をあげると、そこにいたのは……
「あれ、ラス……じゃない!?」
ラスが、縦に伸びた!
……と思わせるような、金髪と青い瞳を持つ青年だった。
ラスがあと5年くらいしたらこうなるのかな?という感じ。
(か、かっこいい……)
ぼーっと見とれていると、彼が口を開く。
「ああ……キミか、異世界の少女というのは」
「えっ、あ……っ」
もしかして、この人。
「俺はラスの兄、ノアです」
…………。
(ああああーっ、やっぱり王族だったぁぁぁぁ!)