ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「す、すみませんでしたぁぁっ!」
どうりで似ているわけだ。
ラスの金髪と青い目は、どうやら王家の血を継ぐ人に多く現れるらしい。
土下座しようとする仁菜を、ノアは優しく止めた。
「気にしていないよ。
可愛いね、キミ。名前は?」
にこりと向けられた笑顔はラスと似ていて、まるで春の陽光みたい。
本物の(ラスだって本物だけど)王子様に見つめられて、仁菜は颯のことなど忘れ、ドキドキしてしまう。
「に、仁菜と申し……」
「何してるの?」
名乗る途中で、背後から声がした。
振り向くと、そこにはちょっと不機嫌そうな顔のラスが。
「行こう、ニーナ」
ラスは、ノアに何も言わず、目さえあわさず、仁菜の手をひいた。
「え、ちょ、ラス?」
お兄さんに会ったのに、その態度はいったい?
「俺が行くって言ったら、ニーナも行くの!」
いら立った声は、いつものラスじゃないみたいだった。
「おいおい、困っているじゃないか。
まるで子供だな。
花嫁をもらうには早いんじゃないか?」
さっきとは別人のような、とげとげしいノアの声が聞こえた。
(は、腹黒兄弟……)
表面上は秀麗な笑顔だけど、お腹の中では何を考えてるのかわからないところが似ている……。